当日は,4 月中旬とはいえ最高気温が12℃のうす曇のもと,まだまだ春爛漫の陽気にはほど遠い天候でしたが,地下鉄南北線旭ヶ丘駅に降り立つと隣接する公園には満開の桜が出迎えてくれました。
このような時節の折,支部会・講演会には産学官より40名程の方々に参加していただきました。
支部会・講演会の開催に先立ち,これまでご尽力いただいた木村 武美 前支部長(溶接検査(株))から4月1日に支部長職を交代した燈明 泰成(東北大学大学院工学研究科)新支部長より開会の挨拶があり,これまでの功績を引き継ぎながら会員の皆様に有益な情報と活動・交流の場を提供すべく活発な行動と発信を行い,新たな仕組みを構築していきたい旨,挨拶がなされました。
引き続き一般講演が開催され,第一部・第二部のスケジュールにて発表が行われました。今回から講演要旨の様式が決められたこともあり,より見やすく充実した内容の講演資料集が編纂されております。
以下に一般講演題目と登壇者を紹介します。 (敬称略)
一般講演においては,35歳以下の若手会員を対象として非破壊検査技術の発展に貢献する優秀な発表者を選出し,後述の支部会にて奨励賞を授与しました。
【第一部 座長:武尾 文雄(八戸高専)】
101 空芯パルス電磁石を用いた高温用電磁超音波探触子の開発:尾形 翔平(東北大学大学院工学研究科)
102 S パラメータを用いた超音波による個体接着状態評価法の検討:福田 誠(秋田大学)
103 高分子フィルムを介した超音波エコーの周波数成分操作について:向峰 翔太(東北大学大学院工学研究科)
104 樹木枝部の変形計測に基づいた折損位置の推定:佐藤 邦明(弘前大学理工学部)
【第二部 座長:福田 誠(秋田大学)】
105 近接4 端子直流電位差法による角部のき裂深さ評価:加賀谷 達郎(八戸高専)
106 Evaluation of Environmental Fatigue Crack Using ECT:封 浩(東北大学大学院工学研究科)
107 皮質骨組織の破壊特性に及ぼす脱アパタイトの影響:長谷川 歩(弘前大学理工学部)
108 FRP の特徴と応用:松嶋 正道(宇宙航空研究開発機構)
次に特別講演が開催され,「ちきゅうで分かる地球のこと」と題して(独)海洋研究開発機構 地球深部探査センター運用室IODP 推進グループ技術主任 五十嵐 智秋氏をお招きし,ご講演をいただきました。
「ちきゅう」は海洋研究開発機構が運航する地球深部探査船で,水深2500m(最終目標は4000m)の深海域で海底下7000m を掘り抜く能力を備えた最新鋭の科学掘削船です。
講演では,「ちきゅう」の紹介の他,非破壊技術の活用例や設備機器の紹介をいただきました。特に,深海から掘削サンプリングされる“コア”地質柱状に関する調査技術や冷凍保存技術,コアの展開・スケッチ技術の他,船内での食事,台風からの回避など航海上のご苦労ばなしを交えた紹介に傾聴しました。
また,2011年3月11日に発生した巨大地震津波による「ちきゅう」の破損から復旧に至る経緯,その後行われた海底面調査によるプレート境界断層付近の地質強度・摩擦係数の低下事例の紹介などは「ちきゅう」が「地球」のメカニズム解明において,大いに活躍していることを実感できるものでした。更に,これらの技術は私たちが身近にしているスケールより遥かに大きな“被検査物”を対象としており,生命や資源が海底面下の地道な調査によって支えられていることが分かりました。
特別講演の後,支部会が開催され,松田輝雄氏(正和工業(株))総合司会の進行によって,支部表彰,平成25年度事業報告・収支決算報告,平成26年度事業計画・収支予算,そして,平成26年度役員紹介が行われました。
今年の支部表彰は,次のとおりでした。
【島田賞】
本賞は,東北地方において,非破壊検査に関する学問・学術または,技術に特に顕著な功績があった会員が表彰されるもので,本年3月にご逝去された日本非破壊検査協会・元会長 島田 平八氏(東北大学名誉教授)によって創設されたものです。
受賞者 木村 武美氏(溶接検査(株))
推薦者 坂 眞澄氏(東北大学)
推薦理由 (要旨)研究会創立時から長年にわたり支部活動を先導し,人脈を生かして各県においてご活躍され,非破壊検査の普及啓蒙に努められた。
【奨励賞】
本賞は,非破壊検査技術の普及と振興に貢献することが大いに寄与された会員に授与される賞です。
受賞者 橋本 信二氏(北都検査(株))
推薦者 高橋 晴義氏(仙都計器(株))
推薦理由(要旨)NDT の資格取得に挑戦,情熱ある取組みで全部門レベル3を取得、若手の育成に携わるなど活躍している。
受賞者 福田 誠氏(秋田大学)
推薦者 選考委員長 渡辺 稔(元東北職業能力開発大学校)
推薦理由 一般講演において優れた発表をした若手会員発表者を審査によって選出。
表彰状は燈明支部長から手渡されました。
事業報告・事業計画では,燈明支部長から,東北支部の新しい試みとして昨年7月に開催された超音波技術競技会について,今年度も技術研鑚の場として7月に開催するアナウンスがなされ,会員の皆様より多数の参加をいただけるよう協力の依頼がありました。
また,実技講習会などWGを主体とした活発な事業活動を行うことによって,事業成果を会員の皆様に還元していきたい旨,報告がなされました。
平成26年度の東北支部役員は,燈明 泰成(東北大学大学院)新支部長のもと,新任幹事2名を加えて13名の陣容で運営されることになり,支部会で紹介されました。
なお,長年,幹事としてご尽力いただきました虻川 堅悦氏(東光鉄工(株))は,本支部会をもって退任されることとなりました。
講演会・支部会の後は,仙台市内の懇親会場に移動して酒を酌み交わしながら親睦を深めました。
(文責:三和鋼器(株) 高橋 賢輝)