2018年08月30日

平成30 年度 イブニングサロン 開催報告(2018年8 月29 日)

 平成30 年8 月29 日(水)仙台市内のせんだいメディアテークの7階会議室において,17:00 〜 20:00 にイブニングサロンが開催されました。
 東北地方では,常々非破壊検査技術者が育たない,非破壊検査会社の設立と運営が厳しいと言われており,その中で支部として非破壊試験・検査技術の普及と活動を広めようとこれまでいろいろと活動を展開してまいりました。
 今回は,新技術導入の機会を検討し実施することになりました。受講者も少なく今回は12 名でした。

yamamoto.jpg 講演テーマは,「フェーズドアレイの基礎と適用」とし,オリンパス(株)山本優一郎氏を招いて講演をしていただきました。
 まず司会の渡辺 稔東北支部幹事の紹介により,三原 毅支部長(東北大学大学院工学研究科・教授)より開催の挨拶があった後,山本優一郎氏から講演が行われました。講演の初めに,非破壊検査の基礎についてのおさらいがあり,その後,超音波試験の概要と適用方法,適用例,垂直探傷法,及び斜角探傷法の原理と適用例など,概要がわかりやすく,丁寧な説明があり、その後,フェーズドアレイ法についての概要と次のような話がありました。


yamamoto2.jpgフェーズドアレイの概要
 通常の超音波探傷試験の探触子は一つの振動子(圧電素子)で構成されているが,フェーズドアレイの探触子は複数の振動子(屈折角も各々違う)により構成されている。個々の振動子が超音波を送受信するタイミングを独立に制御し,合成された超音波波面を形成することにより超音波ビームの制御を行う。
 超音波の入射方向や焦点距離を自由に変えて探傷できるため,フェーズドアレイ法は,従来の超音波探傷法では探傷が困難だった狭隘部への適用やボイラ等大径管に発生するクリープ損傷箇所の特定に有効である。
 フェーズドアレイのスキャン方法は,大きく分けて2 種類の電子スキャンによって断面画像化が行われる。
  @リニアスキャン
  Aセクタースキャン
 @のリニアスキャンは,複数の振動子を一つのグループとして,ビームの送受信を行うことと振動子配列方向に直線的な電子スキャンを行う。そして,得られた波形を波高値に応じて色付けをして並べる。
 Aのセクタースキャンは,複数の振動子を一つのグループとして,ビームの送受信を行う。送受信するビームのグループは固定で屈折角度を連続的に変えて扇状に電子スキャンを行う。
リニアスキャンと同じく,得られた波形を波高値に応じて色付けをして並べる。

 フェーズドアレイの特徴点(適用の利点)を挙げると
  @きずの検出能力向上
  A探傷時間の短縮化
  B可視化によるきず位置把握
 この3 点を具体的に言うと,セクタースキャンは,
  * 1 探触子で屈折角度を連続的に変えて検査が可能であること
  *従来超音波のような角度の違う探触子を取り替えて探傷する必要がないこと
  *セクタースキャンでは,溶接線部を検査するのに前後走査をしなくとも溶接部全体に超音波ビームを照射できるので,平行走査のみで検査することが可能であること
  *フェーズドアレイ探傷では,電子スキャンによりリアルタイムで断面画像を取得することができ,そのため,一方向に操作するだけでC スキャン(立体)データを取得することができ,容易に可視化を実現できること

 説明が行われた後,準備した探傷器,探触子,遅延材等を利用して次のような設定条件で実演を行った。
設定条件として
 *同時制御振動子数:16
 *振動の種類: 横波
 *焦点深さ: 無限(1000 mm)
 *スキャンタイプ:セクタースキャン
 *スイープ角度(屈折角度):35 度〜 70 度
 *スイープピッチ :1 度
にそれぞれ設定して
 * 入射点の測定
 * 測定範囲の調整
 * 探傷屈折角度の確認
 * 補正方法
 * エコー高さ区分線の作成
 * 時間軸に対する感度補正機能の活用(TCG)
 * SDH(D10 mm, φ 1mm)を使用し,すべての屈折角度でピークを捉えられるように前後走査を行う上記の条件で実演を行い,次のようにまとめられた。

まとめ
 ・入射点の測定⇒ PA 基準点の設定・確認
 ・測定範囲の調整⇒ PA 深さ表示にて範囲設定,任意の試験片で確認
 ・探傷屈折角の測定⇒ PA 深さ位置確認・遅延時間調整による補正
 ・エコー高さ区分線の作成⇒ PA TCG 適用による指示評価・規格化の際,既存の知見を十分に活用しつつ,フレキシブルな発想で適用する  ・現行の規格に準拠して,PA 法を適用する方向は十分可能と考える適用例の説明がありいろいろな業界での活用が期待される。 フェーズドアレイ法は,探傷結果を定量的に評価するには経験が必要となる面もあるが,構造物内部のきずを検出するには大変有効な手段と考えられるため,今後の適用範囲の拡大が期待される。

konshin.jpgおわりに
 フェーズドアレイ法は,通常のパルス反射法(JIS 法)と同様に反射されてきた超音波信号を解析する方法であるが,多数の振動子をアレイ状に配列したことにより,ビーム走査やフォーカジング及びきずの画像化等が容易になった点が手法そのものの大きな特徴である。今回は,手法の概要とその優位性について,大変素晴らしい研修ができた。そして確認できた。しかし様々な機種に適用するにはクリアしなければならないことも多く,いろいろな機会を捉え,研修を積み,適用を考えていきたい。
 今回の講演では,お忙しいところ,また雨で足元が悪い中,東京から来ていただいたオリンパス(株)の山本様,長谷川様,受講者の方々に感謝申し上げます。

 懇親会も楽しく有意義に過ごせました。
( 文責:支部幹事 渡辺 稔)


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2013年07月14日

東北支部  超音波検査競技会を初めて開催する(2013年7月14日)

 戦後の高度成長を支えてきた大きなものの一つに、日本人の勤勉さによって培われた高度なものづくりの技術・技能があるということは、万人が認めるところであると思います。
 いま製造業では、多くの企業で高度成長を支えた団塊世代の方々の退職と、新卒者の製造業離れによる後継者不足と技術・技能の継承などの問題が発生しております。その為、各種団体等では、技術・技能の継承と広報や技術向上を図る目的で、競技会や各種イベント等を開催しています。
 このような流れの中、東北支部主催,宮城県産業技術総合センターと宮城県鐵構工業協同組合の後援で、平成25年7月14日(日)に、仙台市泉区の宮城県産業技術総合センターにて「超音波検査競技会」を開催しました。これは東北地区の超音波検査の普及と超音波検査技術者の技術のレベルアップを図るのが目的であり、東北地区では初めての開催となりました。
木村支部長より開会の挨拶

 これまでは、「東北地区は非破壊検査技術者が普及しにくい環境ですね」と言われていましたが、東北支部の役員の方々の永年の努力と関係者の方々よりご理解とご協力をいただき、非破壊検査関係の企業、資格取得の受験者数、有資格者等も少しずつ増えてきております。

 開会式では、審査副委員長の渡辺 稔氏(東北職業能力開発大学校)の司会で行われ、競技会実行委員長 木村武美支部長(溶接検査(株))から開会の挨拶があり、「検査業務に携わる者にとって技術向上は不可欠であり、今回の競技会は技術の研鑽と意欲高揚を図ることを目的として実施することになった。普段の実力を十分発揮し競技会を盛り上げてほしい」と述べられました。

 また今回の競技会名誉会長 坂 眞澄氏(東北大学院)から、「我が国の社会インフラ老巧化への対応が急務になっているなかで、老巧化ばかりでなく新しい製品に対する検査も重要になっている。非破壊検査の代表的な手法である超音波検査競技会を開催することは、大変意義深い。7月にドイツで開催された技能五輪国際大会の総合優勝は韓国である。日本は第4位の結果となった。日本はかつては総合優勝の常連だったことを考えると、隔世の感がある。検査の世界でそうなってしまうと安全の根幹に関わる。検査の質の確保と向上に貢献願う」と祝辞と激励がありました。

 その後、選手宣誓として、吉永晋也氏(東北発電工業(株))より「常日頃鍛えた検査技術を十分発揮し、正々堂々と競技することを誓います」と力強い宣言がありました。
吉永選手(東北発電工業)による選手宣誓

 開会式を終えて競技会が開催する前に、競技指示書の説明が審査副委員長 渡辺 稔氏より、競技種目第1部の垂直探傷(時間15 分,角材を与えられた条件で探傷)、斜角探傷(時間40 分、T 継手溶接部を与えられた条件で探傷)する内容、第2部では、斜角探傷(時間30 分、平板突合せ溶接部を与えられた条件で探傷)する内容について説明があった後、競技会が開始されました。
競技会(第1部)の様子

 第1部、第2 部に各4人の選手が参加し、熱戦が展開されました。探傷後は別室に移動し、所定の時間内で探傷データ整理と答案作成が行われました。競技会終了後、審査要項に基づき審査に入り、各審査委員の確認の元、審査は慎重にかつ厳正に行われました。
審査委員長燈明氏より成績発表と講評

 閉会式では、審査委員長 燈明康成氏(東北大学院)より採点の結果成績発表と講評が行われました。その後、受賞者には大会実行委員長 木村武美支部長から、賞状とトロフィが手渡されました。実行副委員長 虻川堅悦氏(東光鉄工(株))より挨拶があり、「今回の競技会が短期間の準備にもかかわらず、競技会当日に順調に進められたのも、中部支部のご協力があってのものであり、中部支部の競技会実施内容を参考にさせて頂いた事に対し関係者にお礼を申し上げます」と謝辞を述べておりました。

競技会の成績表

第1部
順位氏名事業所名県別
最優秀賞吉永 晋也東北発電工業(株)宮城県
優秀賞上田 雅嗣仙台検査(株)宮城県
野口 清浩東光鉄工(株)秋田県
伊藤 剛仙台検査(株)宮城県

第2部
順位氏名事業所名県別
最優秀賞橋 剛東北発電工業(株)宮城県
優秀賞池ヶ谷 靖(株)ジャスト宮城県
佐沢 幸一日本機械工業(株)秋田県
佐々木 直己(株)ジャスト宮城県

表彰後、選手と役員の記念撮影

(文責:東北支部幹事 渡辺 稔)
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2011年09月04日

第3回「ノンディの世界」 開催報告(2011年 9月 4日)

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 東北支部では,去る9月4日(日)に,青少年を対象とした非破壊検査体験イベントを仙台市科学館で開催しました。日本非破壊検査協会のイメージキャラクターである“ノンディちゃん”の名前を使い,「ノンディの世界」として昨年に初開催したこのイベントも,今回で3回目を迎える事ができました。

 一般人には馴染みのない非破壊検査技術ですが,社会の安心・安全を守る大切な技術であることを小中学生や一般の方々に理解してもらうことを目的に,「わかりやすい」「誰でもできる」「おもしろい」をコンセプトにしており,様々な種類の非破壊検査機器についてブースを準備して,実演と体験を中心に,楽しみながら理解してもらえるように工夫しました。

そのいくつかを紹介しますと,

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<チューブジャングル>
 様々な太さや色のチューブを数十本束ねて,端部にメクラ栓を付け,この栓のチューブ内面側に数字を書いておきます。子供たちには,事前に工業用内視鏡の使い方を覚えてもらい,内視鏡を好きなチューブに挿入させて,端栓に書かれた数字を自力で読んでもらいます。この数字に応じた景品を準備しておいて,うまく操作できたら景品をゲット!


<非破壊検査トライアスロン>

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 一連の展示ブースを見学してスタンプカードにハンコをもらった子供に挑戦権があります。「打診法」による割れ欠陥の有無の判定で腕試しをした後、「X線検査」では、X線フィルムに写る身近なものの名前を解答。「超音波探傷」による内部欠陥の個数判定。「工業用内視鏡」による分岐配管の通過。トライアスロンはご存じのとおり3種競技ですが,これら3種類の非破壊検査を制限時間内にクリアできれば景品をゲット!

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 他にも,フェイズドアレイ超音波,X線検査,X線CT,ポータブル蛍光X線検査,マイクロハイスコープ,赤外線・圧力画像システム,空中三次元形状測定,コンクリート検査,超音波検査,超音波シュミレーション等の展示ブースが準備され,子供たちに分かり易い実演や体験クイズを準備しました。

 学術機関からは,東北大学の坂先生・燈明先生,愛媛大学の中畑先生による展示,そして仙台高等専門学校の矢島先生は研究紹介と工作コーナーを準備してくださいました。このコーナーでは,子供たちに半田ごてを使ってダイナモLED懐中電灯を作成してもらい、発電の仕組みなどを勉強してもらおうというものでしたが、子供だけでなく大人も楽しそうに取り組んでいる姿が見られました。

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 参加してくれた子供たちは,間近に非破壊検査機器を見て説明を聞き,自分たちの手で装置を操作してゲームを楽しむことで非破壊検査を実感し,理解を深めてくれたものと思います。

 今回のイベントでは,横野会長,広報活動委員会の三原理事をはじめ主要な委員の皆様に視察して頂きました。小中学生向けのイベントは,東北支部が全国に先駆けて企画したものであり,今後の非破壊検査協会の教育的啓蒙活動の一形態として参考にして頂ければ幸いであります。

 最後に,今回のイベントにご協力頂いた検査機器メーカーや検査会社の皆様に,本紙面を借りて謝意を示させて頂きます。

(文責:宮城県産業技術総合センター 中居 倫夫)

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