東北地方では,常々非破壊検査技術者が育たない,非破壊検査会社の設立と運営が厳しいと言われており,その中で支部として非破壊試験・検査技術の普及と活動を広めようとこれまでいろいろと活動を展開してまいりました。
今回は,新技術導入の機会を検討し実施することになりました。受講者も少なく今回は12 名でした。

通常の超音波探傷試験の探触子は一つの振動子(圧電素子)で構成されているが,フェーズドアレイの探触子は複数の振動子(屈折角も各々違う)により構成されている。個々の振動子が超音波を送受信するタイミングを独立に制御し,合成された超音波波面を形成することにより超音波ビームの制御を行う。
超音波の入射方向や焦点距離を自由に変えて探傷できるため,フェーズドアレイ法は,従来の超音波探傷法では探傷が困難だった狭隘部への適用やボイラ等大径管に発生するクリープ損傷箇所の特定に有効である。
フェーズドアレイのスキャン方法は,大きく分けて2 種類の電子スキャンによって断面画像化が行われる。
@リニアスキャン
Aセクタースキャン
@のリニアスキャンは,複数の振動子を一つのグループとして,ビームの送受信を行うことと振動子配列方向に直線的な電子スキャンを行う。そして,得られた波形を波高値に応じて色付けをして並べる。
Aのセクタースキャンは,複数の振動子を一つのグループとして,ビームの送受信を行う。送受信するビームのグループは固定で屈折角度を連続的に変えて扇状に電子スキャンを行う。
リニアスキャンと同じく,得られた波形を波高値に応じて色付けをして並べる。
@きずの検出能力向上
A探傷時間の短縮化
B可視化によるきず位置把握
この3 点を具体的に言うと,セクタースキャンは,
* 1 探触子で屈折角度を連続的に変えて検査が可能であること
*従来超音波のような角度の違う探触子を取り替えて探傷する必要がないこと
*セクタースキャンでは,溶接線部を検査するのに前後走査をしなくとも溶接部全体に超音波ビームを照射できるので,平行走査のみで検査することが可能であること
*フェーズドアレイ探傷では,電子スキャンによりリアルタイムで断面画像を取得することができ,そのため,一方向に操作するだけでC スキャン(立体)データを取得することができ,容易に可視化を実現できること
設定条件として
*同時制御振動子数:16
*振動の種類: 横波
*焦点深さ: 無限(1000 mm)
*スキャンタイプ:セクタースキャン
*スイープ角度(屈折角度):35 度〜 70 度
*スイープピッチ :1 度
にそれぞれ設定して
* 入射点の測定
* 測定範囲の調整
* 探傷屈折角度の確認
* 補正方法
* エコー高さ区分線の作成
* 時間軸に対する感度補正機能の活用(TCG)
* SDH(D10 mm, φ 1mm)を使用し,すべての屈折角度でピークを捉えられるように前後走査を行う上記の条件で実演を行い,次のようにまとめられた。
・入射点の測定⇒ PA 基準点の設定・確認
・測定範囲の調整⇒ PA 深さ表示にて範囲設定,任意の試験片で確認
・探傷屈折角の測定⇒ PA 深さ位置確認・遅延時間調整による補正
・エコー高さ区分線の作成⇒ PA TCG 適用による指示評価・規格化の際,既存の知見を十分に活用しつつ,フレキシブルな発想で適用する ・現行の規格に準拠して,PA 法を適用する方向は十分可能と考える適用例の説明がありいろいろな業界での活用が期待される。 フェーズドアレイ法は,探傷結果を定量的に評価するには経験が必要となる面もあるが,構造物内部のきずを検出するには大変有効な手段と考えられるため,今後の適用範囲の拡大が期待される。

フェーズドアレイ法は,通常のパルス反射法(JIS 法)と同様に反射されてきた超音波信号を解析する方法であるが,多数の振動子をアレイ状に配列したことにより,ビーム走査やフォーカジング及びきずの画像化等が容易になった点が手法そのものの大きな特徴である。今回は,手法の概要とその優位性について,大変素晴らしい研修ができた。そして確認できた。しかし様々な機種に適用するにはクリアしなければならないことも多く,いろいろな機会を捉え,研修を積み,適用を考えていきたい。
今回の講演では,お忙しいところ,また雨で足元が悪い中,東京から来ていただいたオリンパス(株)の山本様,長谷川様,受講者の方々に感謝申し上げます。
懇親会も楽しく有意義に過ごせました。