2019年09月30日

令和元年度 見学会・講演会 開催報告(2019年9月27日)

 令和の元号になって最初のJSNDI 東北支部見学会・講演会は仙台市地下鉄 荒井車両基地で行われた。
 仙台市の地下鉄は南北線と東西線の2 系統がありJR 仙台駅の地下でこれら2 つの路線が交わる構造になっている。
 地下鉄南北線は1987 年(昭和62 年)に開通し仙台市民の足として定着した感のある路線であるが,東西線は2015 年(平成27 年)に開通したばかりで,リニアモータ方式という駆動方式を採用した地下鉄路線である。今回見学した荒井車両基地はこのリニアモータ車両の保守点検を行うための施設である。見学会は,秋晴れに恵まれた9 月27 日(金)に行われた。

 仙台市地下鉄 荒井車両基地は,東西線の東側終点の荒井駅近くにある。地下鉄を日常的に使っている方々でも,終点駅の先,数百m の位置に車両を保守点検する大きな施設があることなど知らない人も多いのではないかと思われる。
 終点駅から車両基地まで地下のトンネルが伸びていて,ここから登り勾配で車両を地上に出して専用の建屋内に誘導して保守点検を行うようになっている。車両の保守点検以外にもレールの点検補修や線路のあるトンネルの点検をする専用車両などが,ここに控えていて,終電以降の深夜に人知れず地下鉄線路を走って点検修理をしているということであった。
 保守点検を終えた車両は営業運転を行う前に,確認のため試運転をするがこれを行うだけの長い線路や方向転換のためのポイントが敷地内に設置された広い面積の車両基地であった。今回の見学会・講演会では,参加者各自が地下鉄終点駅で降りて会場である車両基地に集合する形で集まった。

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 見学会の最初は,緊急時の訓練施設から始まった。ここでは,緊急停車した車両から乗客を安全に線路に降ろして最寄り駅まで避難させるためのトレーニングや,ホームから線路に転落するのを防止するホームドアを緊急時に手動操作するための訓練を行っているということであった。実物大の車両や駅に設置してあるのと同じホームドアが設置してあり,線路や車両の保守点検だけではなくシステムを動かす“人”のトレーニングも欠かさずに行っているということだった。

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 次に見学したのは,線路とトンネルの保守車両だった。線路の間隔等の寸法がずれていないかを計測し,摩耗したレールを再研磨し,高圧水で洗浄する一台何役もの機能を持った専用車両,そして,地下鉄トンネルの寸法に変化がないかを計測する専用車両を見学した。
 トンネルの寸法が変形するなど想像したこともなかったのだが,万が一これが発生した場合,気付かずに放置すると壁面落下やトンネル崩落につながりかねないことからこの計測も欠かさずに定期的に行っているそうだ。

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 さて,いよいよ本命である車両の検査区域の見学である。
 ここは屋根付きの大きな工場建屋のような区域である。この中で車両を分解して重要部品の非破壊検査までを行っている。地下鉄車両の車体ボディと台車を分離する大型クレーン,台車と車輪部を分離する部分,車軸車輪と台車枠を非破壊検査する作業区と一連の工程を見学させてもらった。

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 リニアモータ駆動の車両ということで,線路側と車両の両方に電磁力を発生させる機構がありこれらの吸引・反発を駆動力にして乗客が乗った重い車体を推進させるもので,一般的なモータ駆動とは異なる構造で興味津々見学させてもらった。駆動部は電磁力を使うため,線路側と車体側の駆動機構のクリアランス(間隔)調整が大切でこれが広がりすぎると推進力が落ち,狭すぎると接触したり異物が挟まりやすくなるそうだ。

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 異物や雪の対策のために台車下のリニアモータ駆動部にはラッセル車の除雪ブレードを小型にしたような機構が付いていた。ちなみに仙台市地下鉄の東西線は清流で有名な広瀬川の上を線路橋で渡っているため雪対策は重要とのこと。
 見学の核心部である非破壊検査工区は,台車枠と車軸の検査を行っていた。車体枠のき裂については最近報道で取り上げられる機会が何度かあり,重要な検査である。非破壊検査協会の見学ということでもあり,見学用デモンストレーションとして車体枠の磁粉探傷を実施しているところを見せてくれた。見学者の皆さんは熱心に見学していた。

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 見学終了後は,会議室に戻って依頼講演を拝聴した。講演者は,(公財)鉄道総合研究所の牧野一成氏で,鉄道車両の非破壊検査についての技術開発,研究開発を行っている研究者である。講演では鉄道車両の非破壊検査について,全体像から個々の検査部位における欠陥原因とき裂形態まで,直前に見学会で見学した鉄道車両の検査と合致する内容で,これらの理解を深める講演を頂いた。公共交通機関である鉄道における非破壊検査の大切さを再認識することができた。

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 見学・講演会の後,仙台に戻って懇親会を開いたが,人口100 万の仙台市民の足である仙台市地下鉄,この安全運行を陰で支える車両基地の大切さを認識する有意義な一日であった。

(文責:宮城県産業技術総合センター 中居 倫夫)


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2018年09月29日

平成30年度 見学会・講演会 開催報告(2018 年9 月28 日)

 2018 年9 月28 日(金),JSNDI 東北支部で毎年開催している支部見学会・講演会を開催した。
 仙台駅に12 時半に集合しチャーターしたバスで,伊藤ハムデイリー本社・東北工場へ向かった。今回は東日本でも有数の肉加工工場の見学で,非破壊検査がどう使われているか等,興味津々で参加した。伊藤ハムデイリーの工場は,4 号線沿いの栗原市高清水町にあり,敷地内に古墳(?)を有する広い敷地内に,防災上の観点から,分割して建設した工場群が配されていた。

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 見学に先立ち,会議室で等身大の阿部寛のCM パネルを前に,会社概要の説明を受けた。従業員数は971 名で,伊藤ハムの子会社ではあるが,デイリーの名前の通り,現在はハムと共にお惣菜製造が主力の商品になっており,レトルトのハンバーグや弁当のおかず等を多数製造していること,これらの商品は伊藤ハムの商品としての流通に加えて,複数のコンビニやスーパーのオリジナル商品の受注生産を多く引き受け,専用のラインを造って製造されている。
 これらの商品は,発売元が提示する条件の範囲で,コンペを勝ち抜いて初めて採用される。いったん採用されると,これらの販売力は圧倒的に強いので,価格は抑えられる反面,安定的大量な販売量を確保できるとのこと。これらの事業を柱に,創業以来常に右肩上がりで成長を続けており,リーマンショック時も伸びが落ちなかったことは,不況に強い食品業界にあっても,特に優良な会社と言える。
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この事業を支えるのは,同社の商品開発力であり,これを実現するため調理機械の多くが独自に設計・製造されているとのこと。これらの部門の責任者が,親会社の伊藤ハム本社の経営陣に加わることも多いこともうなずける。

 その後,白衣,キャップ,マスク,靴カバーのいでたちで,工場見学に臨んだ。最初に驚かされたのは出入り口で,徹底した手洗いは当然ながら,写真のエアシャワー室で僅かのほこりまで徹底的に除去する体制が取られており,食品工場でありながら半導体工場を彷彿とさせる衛生管理であった。
 惣菜加工部では,できるだけ熱を加えず,素材を生かした形でおいしく加工するための様々な工夫がなされた機械が並び,例えばレトルト食品では,素材と調味料を入れてパックした後,おいしく調理するために工夫された沢山の工程ラインが整然と並んでいた。これら機械化が進む一方で,熟練技術者が手作業で,家庭料理同様の手順で大鍋を炒めている商品もあり,最終的にはおいしい商品を作るために様々の工夫がなされていた。

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 ハム・ソーセージ製造ラインでも,コンビニごとに,それぞれの求めに応じて,天然腸詰と人工コラーゲンの袋材質,大きさ,内容物がすべて異なる商品が,ラインごとに製造・箱詰めされ,整然と出荷されていた。
 ここでは,肉の触感を残すため,あえて熱を通さないでいかにおいしく調理するかがカギとのこと。そしてすべての最終工程には,磁気による金属探知とX 線透過画像装置が設置され,金属, sishoku2.jpg骨,異物等の混入を極力排除する体制が取られていた。説明によると,製品に異物混入のクレームがあっても,この工場から出荷した商品には異物混入はないと言い切れる体制を取っているとのこと。

 昨今の食品メーカでは,品質管理の漏れが会社の存続に直結することも多いことを考えると,非破壊検査技術とこれを扱う管理体制が改めて大切だと感じた次第である。
 
 見学修了後は,会議室に戻って,2 件の依頼講演を拝聴した。
 1 件目の演者は,伊藤ハムデイリー(株)東北工場顧問の三浦清司氏で,伊藤ハムに入社後,出身地の宮城県のデイリーに転籍し,コンペに勝ち抜くためにオリジナルな製造機械を設計製造するスタイルの商品開発で,業績を上げてきた経緯を「商品開発の考え方と仕方」の演題で詳細に講演頂いた。
 2 人目の演者は,多賀城の東北歴史博物館学芸部学芸員の芳賀文絵さんで,「博物館における文化財保存調査」の演題で発掘品の評価・保存に関わるお話を頂いた。歴史的遺物の発掘現場は状況が悪い場合が多く,例えば金属製品が地中で錆びている場合,土中から取り出したり,付着した土を払っただけで破損してしまう場合も多く,樹脂等で破損しないように仮補強し,取り出す前に,国立博物館のX 線CT 検査装置の検査が必須とのこと。錆びた刀剣を例に詳細な説明を頂いた。なお発掘し収蔵を決めたら,廃棄は基本的にないそうで,収蔵物はどんどん増える一方とのこと。

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 見学・講演会の後,仙台に戻って懇親会を開いたが,食品製造,考古学でも,非破壊検査の果たす役割を改めて認識した有意義な一日になった。

(文責:東北大学 三原  毅)
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2016年12月21日

平成28年度 見学会 開催報告(2016年8月19日)

 東北支部(支部長 燈明 泰成・東北大学)は平成28年8月19日(金)に、宮城県石巻市の石巻港雲雀野中央埠頭に寄港した地球深部探査船「ちきゅう」を、産学官より15名の参加者と共に「第1回見学会」として船内見学をさせて頂きました。
 当日は快晴かつ夏日で、気持ちの良い青空の下、仙台駅から貸切バスにて出発しました。
 実は今回、諸事情により直前のご案内となり、わずか10日間という大変短い募集期間を経ての開催となったのですが、そんな中仕事の調整をして時間を作り、ご参加くださった皆様は「ちきゅう」にもともと興味がおありだったようで、「今朝青森から車で来て石巻で見学会、その後は東京へ向かいます」なんていう強者もいらっしゃいました。

 約1時間ほどの道中を経て石巻港に着くと、青空に映える白い「ちきゅう」が遠くからでもよく見えました。圧巻です。船体と一緒に集合写真をとも思ったのですが、人を入れると船が全く入りません。船の前方だけでもと思っても、今度は人の顔など見えません。全長210mは伊達じゃない…。

 ところで私、いつもは普通にヒールとスカートで参加するのですが、今回は安全のためご遠慮くださいとの事前注意があったので、「なんか今日小さいね」とか言われながらもフラットシューズで参りました。そして船内へと昇る階段で、もうヒールじゃなくてよかったと実感。ビルの2階分はあろうかという階段が、幅も奥行きも狭いしなんか丸くて怖いし、その後の通路も網アミだし…。船は全然揺れないのですが(これだけ大きいと感じないらしい)、やはり地上とはいろいろ違うのですね。


船橋  この「ちきゅう」は、世界各国が参加する深海掘削計画の主力船として、巨大地震の謎や生命の起源、地球の歴史の観測などを行い、最終的にはマントルの謎を解明するのが目的なんだそう。
 そんな説明と共に、船内ではまず船長に船橋をご案内いただきます。
 航行をコントロールするお部屋で、深い所では7km(!)にも及ぶ海底へと続くパイプが破損しないように、船を自動的に一定の位置に保つ「船位保持システム」や、その動きを司る「アジマススラスタ」(船底にある大きなプロペラ)を制御しています。
 一見するとビル内の非常にハイテクなコントロールルームといった感じで、「面舵いっぱーい!」なんて雰囲気は皆無です。ちょっと残念…。

 続いてヘリデッキへ。数か月以上に及ぶ乗船勤務の途中にある乗組員の交代は、ヘリコプターで送迎されるそうです。ヘリで出勤なんてかっこいいなーとか思いつつ、ここでやっと念願の集合写真を。ここでも素敵な背景と一緒にと思うと、それぞれの顔など分からない写真とはなりましたが、やはり証拠は必要ですからね。

集合写真 ドリルビット.JPG

 その後も船の中央部分から海底へと続くムーンプール(ここからパイプを下していくそう)を眺めながら、実際のドリルビットを拝見したり、研究区画で海底から採取されたコア試料がどのような研究をされるのかなど、大変興味深いお話を伺いました。
 海底の掘削孔に機器を入れる際など「例えば18階建てのビルの屋上から、φ1mmの針金をたらし、地上のφ4mmの穴に入れるのと同じよう」だという作業の難しさや、細長いパイプから出てくるコア試料の部位を巡って、各国の研究者がバトルの末、お子様ランチのように国旗付きつまようじが乱立する様など、まるで目に見えるようでした。

 船内の病院顔負けな検査機器も拝見しながら、X線や超音波などなど、非破壊もたくさん活用されていることに感銘を受けつつも、今回の見学で一番驚いたのは、4週間の乗船勤務の後は4週間の休暇というそのステキな勤務体系でした。4週間てアナタ!
 でも「ちきゅう」は完全なドライシップで、つまり4週間禁酒という日々だそうで、うーん…やっぱムリかも…。

ムーンプール core.JPG

 直前の地震や台風接近にハラハラしておりましたが、最終的には天気にも恵まれ、滅多にない船内見学の機会を満喫した一日となりました。最後に、今回の見学でお世話になりましたJAMSTEC(国立研究開発法人海洋研究開発機構)の皆様と、石巻寄港の予定をいち早くお知らせくださった同機構の五十嵐 智秋さんに心より感謝お礼申し上げます。
(文責:東北支部 星)
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