2018年09月29日

平成30年度 見学会・講演会 開催報告(2018 年9 月28 日)

 2018 年9 月28 日(金),JSNDI 東北支部で毎年開催している支部見学会・講演会を開催した。
 仙台駅に12 時半に集合しチャーターしたバスで,伊藤ハムデイリー本社・東北工場へ向かった。今回は東日本でも有数の肉加工工場の見学で,非破壊検査がどう使われているか等,興味津々で参加した。伊藤ハムデイリーの工場は,4 号線沿いの栗原市高清水町にあり,敷地内に古墳(?)を有する広い敷地内に,防災上の観点から,分割して建設した工場群が配されていた。

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 見学に先立ち,会議室で等身大の阿部寛のCM パネルを前に,会社概要の説明を受けた。従業員数は971 名で,伊藤ハムの子会社ではあるが,デイリーの名前の通り,現在はハムと共にお惣菜製造が主力の商品になっており,レトルトのハンバーグや弁当のおかず等を多数製造していること,これらの商品は伊藤ハムの商品としての流通に加えて,複数のコンビニやスーパーのオリジナル商品の受注生産を多く引き受け,専用のラインを造って製造されている。
 これらの商品は,発売元が提示する条件の範囲で,コンペを勝ち抜いて初めて採用される。いったん採用されると,これらの販売力は圧倒的に強いので,価格は抑えられる反面,安定的大量な販売量を確保できるとのこと。これらの事業を柱に,創業以来常に右肩上がりで成長を続けており,リーマンショック時も伸びが落ちなかったことは,不況に強い食品業界にあっても,特に優良な会社と言える。
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この事業を支えるのは,同社の商品開発力であり,これを実現するため調理機械の多くが独自に設計・製造されているとのこと。これらの部門の責任者が,親会社の伊藤ハム本社の経営陣に加わることも多いこともうなずける。

 その後,白衣,キャップ,マスク,靴カバーのいでたちで,工場見学に臨んだ。最初に驚かされたのは出入り口で,徹底した手洗いは当然ながら,写真のエアシャワー室で僅かのほこりまで徹底的に除去する体制が取られており,食品工場でありながら半導体工場を彷彿とさせる衛生管理であった。
 惣菜加工部では,できるだけ熱を加えず,素材を生かした形でおいしく加工するための様々な工夫がなされた機械が並び,例えばレトルト食品では,素材と調味料を入れてパックした後,おいしく調理するために工夫された沢山の工程ラインが整然と並んでいた。これら機械化が進む一方で,熟練技術者が手作業で,家庭料理同様の手順で大鍋を炒めている商品もあり,最終的にはおいしい商品を作るために様々の工夫がなされていた。

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 ハム・ソーセージ製造ラインでも,コンビニごとに,それぞれの求めに応じて,天然腸詰と人工コラーゲンの袋材質,大きさ,内容物がすべて異なる商品が,ラインごとに製造・箱詰めされ,整然と出荷されていた。
 ここでは,肉の触感を残すため,あえて熱を通さないでいかにおいしく調理するかがカギとのこと。そしてすべての最終工程には,磁気による金属探知とX 線透過画像装置が設置され,金属, sishoku2.jpg骨,異物等の混入を極力排除する体制が取られていた。説明によると,製品に異物混入のクレームがあっても,この工場から出荷した商品には異物混入はないと言い切れる体制を取っているとのこと。

 昨今の食品メーカでは,品質管理の漏れが会社の存続に直結することも多いことを考えると,非破壊検査技術とこれを扱う管理体制が改めて大切だと感じた次第である。
 
 見学修了後は,会議室に戻って,2 件の依頼講演を拝聴した。
 1 件目の演者は,伊藤ハムデイリー(株)東北工場顧問の三浦清司氏で,伊藤ハムに入社後,出身地の宮城県のデイリーに転籍し,コンペに勝ち抜くためにオリジナルな製造機械を設計製造するスタイルの商品開発で,業績を上げてきた経緯を「商品開発の考え方と仕方」の演題で詳細に講演頂いた。
 2 人目の演者は,多賀城の東北歴史博物館学芸部学芸員の芳賀文絵さんで,「博物館における文化財保存調査」の演題で発掘品の評価・保存に関わるお話を頂いた。歴史的遺物の発掘現場は状況が悪い場合が多く,例えば金属製品が地中で錆びている場合,土中から取り出したり,付着した土を払っただけで破損してしまう場合も多く,樹脂等で破損しないように仮補強し,取り出す前に,国立博物館のX 線CT 検査装置の検査が必須とのこと。錆びた刀剣を例に詳細な説明を頂いた。なお発掘し収蔵を決めたら,廃棄は基本的にないそうで,収蔵物はどんどん増える一方とのこと。

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 見学・講演会の後,仙台に戻って懇親会を開いたが,食品製造,考古学でも,非破壊検査の果たす役割を改めて認識した有意義な一日になった。

(文責:東北大学 三原  毅)


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2018年08月30日

平成30 年度 イブニングサロン 開催報告(2018年8 月29 日)

 平成30 年8 月29 日(水)仙台市内のせんだいメディアテークの7階会議室において,17:00 〜 20:00 にイブニングサロンが開催されました。
 東北地方では,常々非破壊検査技術者が育たない,非破壊検査会社の設立と運営が厳しいと言われており,その中で支部として非破壊試験・検査技術の普及と活動を広めようとこれまでいろいろと活動を展開してまいりました。
 今回は,新技術導入の機会を検討し実施することになりました。受講者も少なく今回は12 名でした。

yamamoto.jpg 講演テーマは,「フェーズドアレイの基礎と適用」とし,オリンパス(株)山本優一郎氏を招いて講演をしていただきました。
 まず司会の渡辺 稔東北支部幹事の紹介により,三原 毅支部長(東北大学大学院工学研究科・教授)より開催の挨拶があった後,山本優一郎氏から講演が行われました。講演の初めに,非破壊検査の基礎についてのおさらいがあり,その後,超音波試験の概要と適用方法,適用例,垂直探傷法,及び斜角探傷法の原理と適用例など,概要がわかりやすく,丁寧な説明があり、その後,フェーズドアレイ法についての概要と次のような話がありました。


yamamoto2.jpgフェーズドアレイの概要
 通常の超音波探傷試験の探触子は一つの振動子(圧電素子)で構成されているが,フェーズドアレイの探触子は複数の振動子(屈折角も各々違う)により構成されている。個々の振動子が超音波を送受信するタイミングを独立に制御し,合成された超音波波面を形成することにより超音波ビームの制御を行う。
 超音波の入射方向や焦点距離を自由に変えて探傷できるため,フェーズドアレイ法は,従来の超音波探傷法では探傷が困難だった狭隘部への適用やボイラ等大径管に発生するクリープ損傷箇所の特定に有効である。
 フェーズドアレイのスキャン方法は,大きく分けて2 種類の電子スキャンによって断面画像化が行われる。
  @リニアスキャン
  Aセクタースキャン
 @のリニアスキャンは,複数の振動子を一つのグループとして,ビームの送受信を行うことと振動子配列方向に直線的な電子スキャンを行う。そして,得られた波形を波高値に応じて色付けをして並べる。
 Aのセクタースキャンは,複数の振動子を一つのグループとして,ビームの送受信を行う。送受信するビームのグループは固定で屈折角度を連続的に変えて扇状に電子スキャンを行う。
リニアスキャンと同じく,得られた波形を波高値に応じて色付けをして並べる。

 フェーズドアレイの特徴点(適用の利点)を挙げると
  @きずの検出能力向上
  A探傷時間の短縮化
  B可視化によるきず位置把握
 この3 点を具体的に言うと,セクタースキャンは,
  * 1 探触子で屈折角度を連続的に変えて検査が可能であること
  *従来超音波のような角度の違う探触子を取り替えて探傷する必要がないこと
  *セクタースキャンでは,溶接線部を検査するのに前後走査をしなくとも溶接部全体に超音波ビームを照射できるので,平行走査のみで検査することが可能であること
  *フェーズドアレイ探傷では,電子スキャンによりリアルタイムで断面画像を取得することができ,そのため,一方向に操作するだけでC スキャン(立体)データを取得することができ,容易に可視化を実現できること

 説明が行われた後,準備した探傷器,探触子,遅延材等を利用して次のような設定条件で実演を行った。
設定条件として
 *同時制御振動子数:16
 *振動の種類: 横波
 *焦点深さ: 無限(1000 mm)
 *スキャンタイプ:セクタースキャン
 *スイープ角度(屈折角度):35 度〜 70 度
 *スイープピッチ :1 度
にそれぞれ設定して
 * 入射点の測定
 * 測定範囲の調整
 * 探傷屈折角度の確認
 * 補正方法
 * エコー高さ区分線の作成
 * 時間軸に対する感度補正機能の活用(TCG)
 * SDH(D10 mm, φ 1mm)を使用し,すべての屈折角度でピークを捉えられるように前後走査を行う上記の条件で実演を行い,次のようにまとめられた。

まとめ
 ・入射点の測定⇒ PA 基準点の設定・確認
 ・測定範囲の調整⇒ PA 深さ表示にて範囲設定,任意の試験片で確認
 ・探傷屈折角の測定⇒ PA 深さ位置確認・遅延時間調整による補正
 ・エコー高さ区分線の作成⇒ PA TCG 適用による指示評価・規格化の際,既存の知見を十分に活用しつつ,フレキシブルな発想で適用する  ・現行の規格に準拠して,PA 法を適用する方向は十分可能と考える適用例の説明がありいろいろな業界での活用が期待される。 フェーズドアレイ法は,探傷結果を定量的に評価するには経験が必要となる面もあるが,構造物内部のきずを検出するには大変有効な手段と考えられるため,今後の適用範囲の拡大が期待される。

konshin.jpgおわりに
 フェーズドアレイ法は,通常のパルス反射法(JIS 法)と同様に反射されてきた超音波信号を解析する方法であるが,多数の振動子をアレイ状に配列したことにより,ビーム走査やフォーカジング及びきずの画像化等が容易になった点が手法そのものの大きな特徴である。今回は,手法の概要とその優位性について,大変素晴らしい研修ができた。そして確認できた。しかし様々な機種に適用するにはクリアしなければならないことも多く,いろいろな機会を捉え,研修を積み,適用を考えていきたい。
 今回の講演では,お忙しいところ,また雨で足元が悪い中,東京から来ていただいたオリンパス(株)の山本様,長谷川様,受講者の方々に感謝申し上げます。

 懇親会も楽しく有意義に過ごせました。
( 文責:支部幹事 渡辺 稔)
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2018年04月20日

平成30年度 支部会・講演会 開催報告(2018年4月20日)

 東北支部(支部長:三原 毅・東北大学)は平成30年4月20日(金)に、仙台市青葉区の戦災復興記念館にて、産学官より27名の参加者と共に「第6回 支部会・講演会」を開催しました。

奨励賞を受賞した藤田氏 一般講演は中居 倫夫・高橋 順一幹事が座長となり行われました。
 一般講演においては7件の発表を頂きました。7名の講演者より優秀な発表を選出し、後述の支部会にて奨励賞を授与しました。
以下に一般講演演目と登壇者を紹介します。(敬称略)
座長:高橋 順一(東北鉄骨橋梁 株式会社)
101 低周波電磁場を用いた二重缶減肉評価技術の開発研究
    小野 陽平(東北大学大学院工学研究科)
102 マイクロ波探傷法による配管検査を考慮した曲がり部におけるモード変換の影響因子の評価
    陳 冠任(東北大学大学院工学研究科)
103 薄膜磁気インピーダンスセンサを用いた強磁場中の非破壊検査
   中居 倫夫(宮城県産業技術総合センター)

座長:中居 倫夫(宮城県産業技術総合センター)
104 金属の含有による毛髪の構造弾性率の変化について
    藤田 賢人(東北大学大学院工学研究科)
105 ソフト系PZTを用いた低周波アレイ用大振幅超音波探触子の検討
    菊池 洸佑(東北大学大学院工学研究科)
106 電圧固定振幅差分法を用いた非線形表面波フェーズドアレイの振幅比依存性
    中島 弘達(東北大学大学院工学研究科)
107 JSNDI主催実技対策講習会(2次試験・再認証)の内容及びその問題点について
    南 康雄(JSNDI教育委員会U専門委員長(横浜NDIアカデミー))

特別講演 木村氏
 特別講演は三原 毅支部長が座長を行い、平成29年度の島田賞を授与した木村 光彦氏(秋田県産業技術センター)により「超硬合金−金属ろう付け過程の応力緩和シミュレーション」の演目でご講演を頂きました。異材接合時の残留応力についての内容説明や測定方法など、パワーポイントを使用して分かりやすく解説して頂きました。

 支部会は佐々木 博幹事の司会で行われました。これまでご尽力いただいた燈明 泰成前支部長(東北大学大学院工学研究科)から4月1日に支部長職を交代した三原 毅(東北大学大学院工学研究科)新支部長より支部長の挨拶がありました。
 その後、表彰、議題、役員紹介が行われました。
受賞者 表彰では三原 毅支部長より推薦説明があり、今年の表彰者は次の通りでした。
【島田賞】
 受賞者 高橋 敬一氏(株式会社 仙台エンジニアリング)
 推薦者 渡辺 稔氏 (東北職業能力開発大学校)
【奨励賞】
 受賞者 遠藤 翔大氏(株式会社 カガヤ)
 推薦者 池ヶ谷 靖氏(株式会社 ジャスト)
 一般講演受賞者 藤田 賢人氏(東北大学大学院工学研究科)
 選考委員長 燈明 泰成氏(JSNDI東北支部 幹事)
 表彰状は三原 毅支部長から手渡されました。

shugo6.jpg 続いて議題に移り@事業報告・計画、A決算報告・予算について説明がされ、異議の無い事を確認し了承を頂きました。平成30年度の役員・講習会WGメンバー紹介がなされ、本年度も活発に活動する事を確認しました。

 最後に支部会・講演会の後は、仙台市内の懇親会会場に移動し、大塚 亮裕幹事の司会進行で行われ、懇親会会場でも活発な意見交換が行われ有意義な時間を過ごす事が出来ました。
(文責・写真撮影:仙台検査 株式会社 伊藤 剛)
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