2013年07月14日

東北支部  超音波検査競技会を初めて開催する(2013年7月14日)

 戦後の高度成長を支えてきた大きなものの一つに、日本人の勤勉さによって培われた高度なものづくりの技術・技能があるということは、万人が認めるところであると思います。
 いま製造業では、多くの企業で高度成長を支えた団塊世代の方々の退職と、新卒者の製造業離れによる後継者不足と技術・技能の継承などの問題が発生しております。その為、各種団体等では、技術・技能の継承と広報や技術向上を図る目的で、競技会や各種イベント等を開催しています。
 このような流れの中、東北支部主催,宮城県産業技術総合センターと宮城県鐵構工業協同組合の後援で、平成25年7月14日(日)に、仙台市泉区の宮城県産業技術総合センターにて「超音波検査競技会」を開催しました。これは東北地区の超音波検査の普及と超音波検査技術者の技術のレベルアップを図るのが目的であり、東北地区では初めての開催となりました。
木村支部長より開会の挨拶

 これまでは、「東北地区は非破壊検査技術者が普及しにくい環境ですね」と言われていましたが、東北支部の役員の方々の永年の努力と関係者の方々よりご理解とご協力をいただき、非破壊検査関係の企業、資格取得の受験者数、有資格者等も少しずつ増えてきております。

 開会式では、審査副委員長の渡辺 稔氏(東北職業能力開発大学校)の司会で行われ、競技会実行委員長 木村武美支部長(溶接検査(株))から開会の挨拶があり、「検査業務に携わる者にとって技術向上は不可欠であり、今回の競技会は技術の研鑽と意欲高揚を図ることを目的として実施することになった。普段の実力を十分発揮し競技会を盛り上げてほしい」と述べられました。

 また今回の競技会名誉会長 坂 眞澄氏(東北大学院)から、「我が国の社会インフラ老巧化への対応が急務になっているなかで、老巧化ばかりでなく新しい製品に対する検査も重要になっている。非破壊検査の代表的な手法である超音波検査競技会を開催することは、大変意義深い。7月にドイツで開催された技能五輪国際大会の総合優勝は韓国である。日本は第4位の結果となった。日本はかつては総合優勝の常連だったことを考えると、隔世の感がある。検査の世界でそうなってしまうと安全の根幹に関わる。検査の質の確保と向上に貢献願う」と祝辞と激励がありました。

 その後、選手宣誓として、吉永晋也氏(東北発電工業(株))より「常日頃鍛えた検査技術を十分発揮し、正々堂々と競技することを誓います」と力強い宣言がありました。
吉永選手(東北発電工業)による選手宣誓

 開会式を終えて競技会が開催する前に、競技指示書の説明が審査副委員長 渡辺 稔氏より、競技種目第1部の垂直探傷(時間15 分,角材を与えられた条件で探傷)、斜角探傷(時間40 分、T 継手溶接部を与えられた条件で探傷)する内容、第2部では、斜角探傷(時間30 分、平板突合せ溶接部を与えられた条件で探傷)する内容について説明があった後、競技会が開始されました。
競技会(第1部)の様子

 第1部、第2 部に各4人の選手が参加し、熱戦が展開されました。探傷後は別室に移動し、所定の時間内で探傷データ整理と答案作成が行われました。競技会終了後、審査要項に基づき審査に入り、各審査委員の確認の元、審査は慎重にかつ厳正に行われました。
審査委員長燈明氏より成績発表と講評

 閉会式では、審査委員長 燈明康成氏(東北大学院)より採点の結果成績発表と講評が行われました。その後、受賞者には大会実行委員長 木村武美支部長から、賞状とトロフィが手渡されました。実行副委員長 虻川堅悦氏(東光鉄工(株))より挨拶があり、「今回の競技会が短期間の準備にもかかわらず、競技会当日に順調に進められたのも、中部支部のご協力があってのものであり、中部支部の競技会実施内容を参考にさせて頂いた事に対し関係者にお礼を申し上げます」と謝辞を述べておりました。

競技会の成績表

第1部
順位氏名事業所名県別
最優秀賞吉永 晋也東北発電工業(株)宮城県
優秀賞上田 雅嗣仙台検査(株)宮城県
野口 清浩東光鉄工(株)秋田県
伊藤 剛仙台検査(株)宮城県

第2部
順位氏名事業所名県別
最優秀賞橋 剛東北発電工業(株)宮城県
優秀賞池ヶ谷 靖(株)ジャスト宮城県
佐沢 幸一日本機械工業(株)秋田県
佐々木 直己(株)ジャスト宮城県

表彰後、選手と役員の記念撮影

(文責:東北支部幹事 渡辺 稔)
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2013年04月26日

平成25年度 東北支部会・講演会 開催報告(2013年 4月 26日)

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 東北支部の支部会・講演会は平成25年4月26日(金)仙台市青葉区の青年文化センターで開催されました。昨春の一般社団法人への移行に伴い,これまでの支部総会から衣替えした,記念すべき第一回目の開催でした。

今年の仙台は,桜が満開の時に雪が積もるなど,春になっても寒い日が続いていました。この日も小雨が降って肌寒い日でしたが,それにもかかわらず,支部会・講演会には45名の方々に参加していただきました。

 支部会では,最初に木村 武美 支部長(溶接検査(株)社長)から開会の挨拶があり,その後,表彰,平成24年度事業報告・決算報告,平成25年度事業計画・予算,そして,平成25年度役員紹介が行われました。

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 今年の支部表彰は,伊藤 剛 氏(仙台検査(株))が奨励賞を受賞しました。本賞は,非破壊検査技術の普及と振興に貢献することが大いに期待される会員に授与される賞です。推薦者は東北支部幹事である,東北職業能力開発大学校の渡辺 稔 先生で、表彰状は木村 支部長から手渡されました。

 事業報告・事業計画では,燈明 副支部長から,東北支部の新しい試みであるUT競技会(7月開催予定)のアナウンスがあった他,東北支部の歴史の紹介がありました。東北支部の前身は,平成4年に設立された「東北非破壊検査研究会」で,故伊達和博 教授(東北大)が講習会と研究発表会を中心に活動を始めたのがはじまりでした。その後,平成17年に東北支部となり現在に至っています。今回,配布された会議資料に,研究会の設立当初から運営に携わっていた高橋 忠雄 氏から,東北支部の歴史についての投稿を頂き掲載しました。

平成25年度の東北支部役員は,

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支部長 木村 武美(溶接検査(株))

副支部長 燈明 泰成(東北大学大学院工学研究科)

幹事 虻川 堅悦(東光鉄工(株))他9名

の陣容で運営されることになり,支部会で紹介されました。

 講演会では,2件の特別講演を頂きました。

 1件目の特別講演は,弘前大学大学院の笹川 和彦 教授による「微細電子配線の安全性評価と生体の応力評価」です。笹川先生の研究は,LSIなど電子デバイスの電気配線が,電流の流れで細くなり断線するエレクトロマイグレーション損傷の寿命予測の研究と,人工関節や義足,骨折した人に用いる装具などの機能評価を,これに使う生体計測用圧力センサも自前で開発しながらの研究などです。講演では,コンピュータシミュレーションや微小センサを使って,電子デバイスや医療分野の評価・測定を行う最先端の研究を紹介して下さいました。

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 特別講演の2件目は,高知工業高等専門学校の寺田 幸博 教授による「GPS津波計・波浪計・潮位計の開発について −産学官イノベーション創出の視点−」です。寺田先生は,海上に浮揚するブイで,GPSの高精度な位置情報を利用した,津波・波浪・潮位を観測するシステムを開発なされました。東日本大震災の際は,東日本の太平洋岸に設置されたGPS波浪計が,津波データをリアルタイムで気象庁に伝えるなど,津波や台風などの防災にこのシステムを活用する研究を行っています。今回の講演では,開発の苦労話から東日本大震災で大津波警報の根拠になった実測データまで,ご紹介頂きながらの講演でした。

 その後の製品紹介は2件。東光鉄工(株)の虻川 堅悦 氏には軽量高強度で柱・梁がなくても3mの積雪に耐えられるという「TOKOドーム」を,南極昭和基地での写真などを交えながらの紹介,富士フィルムビジネスサプライ(株)の土肥 幸児 氏には「デジタルX線画像システムFCR DynamIx HR2」をご紹介頂きました。手差しIPシステム、走査権限管理機能対応システムなどの新機能による利便性の向上や、航空機部品からセラミックス複合材製造、パイプライン保全他と広範な分野に及ぶ適用マーケットについてなどの説明がありました。

 講演会の後は,仙台市内の懇親会場に移動して酒を酌み交わしながら親睦を深めました。

(文責:宮城県産業技術総合センター 中居 倫夫)

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2012年11月09日

平成24年度 見学会・講演会 開催報告(2012年11月9日)

 平成24年11月9日に、東北支部では見学会としてJAXA角田宇宙センター(角田市君萱字小金沢1)に伺いました。さらに、同施設内の講演会場をお借りして、森谷信一氏(JAXA角田宇宙センター)により「燃焼器の非破壊検査技術に関して」、高田一氏により(JFEテクノリサーチ梶j「鉄鋼製品の最新高速検査技術のレビューと今後発展が期待されるドライ超音波技術のご紹介」の講演を賜りました。
 参加人数32名と大盛況に終えることができた見学会・講演会ですが、この見学会にフィンランドの大学(HMUAS: ヘルシンキメトロポリア応用科学大学)からの交換留学生も参加し、日本のロケットの最先端に触れて喜んでいました。


 先に講演された森谷信一氏は、ロケットエンジンの冷却装置の安全性の計測を行うにあたり、1つのポリシーを持って取り組んでいました。エンジンを取り外すことなく、設置された状態で検査を行う。このために、レザーと超音波を融合させマルチ周波数解析による欠陥の可視化技術を実現されました。

 

 高田氏の講演では、リニアアレイプローブを用いた薄板内部小欠陥のオンライン検出技術のとして、φ20μmの欠陥検出が可能となるように、リニアアレイプローブからの 送信方法をこれまでの電子収束ではなく、同時送受波とディジタル信号処理を用いてパラレル受波ニードルビーム超音波装置の紹介、ドライ超音波映像装置の今後について講演いただきました。


 その後、敷地内の各施設へとバス移動し、巨大な高温衝撃風洞や極低温インデューサ試験施設、一般展示室を見学させていただきました。高温衝撃風洞では、大気圏突入時の実験シミュレーション時のスケールダウンによる発生熱量、衝撃波の実現のために、こうした設備が必要であり、唯一オブジェクトを自然落下させて実験が可能であることなどを説明いただきました。

 一般展示では、実際に爆発事故により破壊されたエンジンや燃焼系の紹介など、貴重な展示物を間近に見る事ができました。他にも構想中のラムダジェットエンジン搭載のシャトルなども見学することができ、少年時代抱いていた宇宙への夢をひと時思い出すことができた一日でした。

(文責:仙台高等専門学校 矢島 邦昭)

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